(2022.12.7)

「人間の時代/Human age」という言葉に示されるように、現代は人類が強大な力をもち、かつてない物質的繁栄を享受する一方で、その同じ力によって地球環境を破壊しかねないような時代です。そして、その力の源泉であり、かつ、人間の行動に深く影響しているのは、習慣、技術、経験則、道具、動機、価値観、信念など、人々が長い期間にわたって培ってきた様々な文化です。

そのため、持続可能な社会制度を実現し、人々に真の幸福をもたらす事業を計画実行していくためには、こうした文化に関する情報(=文化情報)を取得・蓄積し、人間は何を求め、何を好み、何を幸せと感じ、どういう場合にどういう行動に出るのかを理解することがきわめて重要です。データサイエンスは、大規模なデータを数理科学と情報学、統計学に基づいて解析し、データから新たな価値を引き出す学問ですが、この理由により、文化はデータサイエンスの最前線に位置しており、また最重要ターゲットでもあります。

文化情報学部では、2005年の発足時にすでに、こうした文化情報の重要性とデータサイエンスのポテンシャルに着目し、研究の目標として、

(1)学術研究に基づく確かな文化情報を社会に供給する
(2)データサイエンスの分野横断的な強みを生かし、文化研究の方法論的な基礎を供給する

という二つを掲げ、教育の面では、

(3) 学生も教員もこれらの目標に向かって共同作業することを中心に据えた教育課程

を実施してきました。

2024年度から実施する新しい教育課程は、この理念をより鮮明に反映し、本学部の強みと独自性がさらに効果を発揮するものとなります。

そこでは、各学生は教育機関の単なる利用者としてではなく、研究機関の一員として扱われます。そのため、学生は社会から恩恵を受けるだけのTAKER としての社会参加から、社会に恩恵をもたらすGIVERとしての社会参加に移行し、青年期の最重要課題である「社会において自分をどう生かしていくか」という問題への思考を早くからめぐらせることになります。

また、徹底した探究型のカリキュラムを通じて、学問的探究の態度と能力を習得することとなり、他人から教えられるだけでなく、自ら必要な情報を求め、確かなデータ源・情報源を探り当てることのできる、自主的で自律的な学習者としての人生を歩み出します。

しかも、文化とデータサイエンスの融合という最前線の学問分野において、理系の学生も文系の学生も、未知の領域に分け入って研究を行う楽しさを経験することで、それまでにもっていた誤った苦手意識と専門意識から解放され、自らの殻を破る能力を身に付けます。こうして、本学部では、どんな分野にでも手を伸ばして学習する知的バイタリティにより、社会情勢の激しい変化に柔軟に対応できる人物を輩出します。

本学部は、こうしたビジョンのもと、他の高等教育機関にない、独自の教育研究上の貢献を行って参ります。