教員紹介
計量社会学研究室
鄭 躍軍教授

プロフィール
中国内蒙古自治区生まれ。北京の大学で教鞭を執った後、1991年に来日。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了後、統計数理研究所助手。総合地球環境学研究所准教授などを経て、2009年より現職。もともとは森林の収量予測や成長管理などを扱う森林科学を研究していたが、統計学を軸に研究対象を人間社会へシフトした。曰く「森林とは異なり、人間には個人個人の考えが宿っている」。いかに調査すれば信頼性のある結果が得られるのか、日々探究している。
人々の意識や行動様式から文化や社会の諸現象を探る
一つの問いから見える
それぞれの社会の特徴
生まれ変わるなら男?それとも女?これは、1953年以来統計数理研究所が行っている「日本人の国民性調査」の設問の一つです。男性はいつの時代も約9 割が「男」と答え、女性も1960年代後半までは約7割が「男」と回答していました。状況が変化したのは1973年。「女」と答える女性の割合が増え続け、2008年には7割に至りました。
ここで中国や韓国など近隣国に目を向けると、依然、女性の約半分は「男」と答えています。なぜ日本では逆転し続けているのか。女性の社会的地位の向上や自己評価の高まりなど、日本社会で起こっている事象に関連づけて議論されています。
このように、人々の意識・行動様式や人間社会の仕組みを客観的データで捉え、さまざまな視点から文化・社会現象を解き明かしていくのが計量社会学という学問です。
環境を意識はしても、
行動に移さない日本人
また、日本におけるある環境意識調査では、地球温暖化に関して7割以上の人が「対策が必要」と答えました。さらに、「文化、経済、科学技術、環境」のうち国際交流において優先すべきものを問う設問では、「環境」を選んだ人が最も多くいました。
こうした考えとは裏腹に、節電や節水、ゴミの削減など環境行動に取り組む割合は低く、3割どまり。経済を優先する韓国、科学技術を優先する中国にすら追い抜かれています。つまり、「日本人は環境への意識は高いが、行動は他国に劣る」という結果。こうしたデータは今後日本人が環境のために何をなすべきか考えるヒントになるでしょう。
個人の意識と集団の在り方
当ゼミでは、人間社会の仕組み、人々の意識や行動様式を客観的なデータに基づき分析しています。どのようなデータをどのように収集していくのか、という理論的な研究だけでなく、既存のデータを中心に、人間社会のネットワーク構造を理解する応用的な研究テーマも扱います。卒業生の研究テーマは、「ショッピングセンターの消費動向分析」や「フェアトレード展開の可能性」など。学生を指導する際は、それぞれの個性を生かすことを心掛けています。皆さんには、チャレンジ精神を持って、データを中心とした研究に挑んでほしいですね。