FACULTY MEMBERS
目の前のデータへの向き合い方を明らかにすることで、研究者でなくても、楽しんで科学する人が増えることが理想なんです。
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データ駆動科学研究室

中西 義典

博士前期課程准教授

PROFILE

2016年東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻博士後期課程修了後、同大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系助教、科学技術振興機構さきがけ個人研究者などを経て、2021年より現職。博士(科学)。学部生の頃は主に物理学を学んでいたが、人間の脳に関心を寄せて進学した大学院の研究室でデータ科学や情報学の研究に取り組むようになる。そして文化情報学に出会う。

データ科学の限界を解明し、乗り越える

データは科学を駆動していますか?

データが足りていないという状態は非常に厄介です。というのも、その状態から得られる情報は確かなものではないからです。偽情報とはいわないまでも、本当は不確かな情報であるにもかかわらず、それを確かな情報と勘違いするのは避けたいものです。さらに厄介な問題も潜んでいます。それは、データは懸命に集めたものであるがゆえに、データ不足の状態に陥っていると自分で気づくのが思いのほか難しいということです。
データの状態を明らかにすることができたら、確かな情報を急くあまりの勇み足や、徒に慎重になるあまりの及び腰が無くなるでしょう。不確かなものを不確かであると見分けられるようになれば、そのことが次のデータをどのように集めたらよいかという道標になるかもしれません。こうして、将来の科学を駆動する力としたいのです。

文化現象の数理モデリング

アニメに登場するロボットや歴史的な建造物などをプラスチックで象ったものをプラモデルといいます。プラモデルを組み立てると実際に手に取って触れたり動かしたりできます。同じように、人間や社会に起こることを数理的に表したものを数理モデルといいます。数理モデルの強みは、コンピュータで「触れたり動かしたり」できることにあります。つまり、現実を良くするアイデアが浮かんだら、それをコンピュータの中で逸早くシミュレーションして試すこともできます。
文化科学は数理モデルのフロンティアです。そこには、文化をつぶさに観察して自ら数理モデルを作っていく草分け的な面白さが数多く残されています。プラモデル然り、モデルは組み立てているとき、まさにモデリングの瞬間にこそ、その醍醐味を味わえるものではないでしょうか。

「趣味と言えるほどではないもの」を大切に

研究の題材探しに悩んでいる学生に趣味を尋ねてみると「趣味といえるほどではないですが、○○○です」と返ってくることがあります。もしかしたら、「○○○」について何某かの水準に達していないと趣味と言えないという思い込みがあるのかもしれませんが、その「○○○」に自覚的になることで思いもよらない研究に結びつくことも少なくないような気がします。

私は多趣味な方だと思います。これまでの研究も物性科学・天文学・地質学・神経科学など多岐にわたります。いろいろな分野のデータ分析に携わると、そのプロセスが宛らその分野の人間の常識や直感を言語化しようとしているように思えて、そのような人間理解の営みこそ私にとっての文化情報学かと感じるときがあります。まだ、専門といえるほどではないのですが。