FACULTY MEMBERS
“言葉の化石"である方言を時間的変化と空間的変化の両面で追っていくと、言語や文化の伝播、人の移動経路などが一挙に明らかになります。
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言語生態研究室

沈 力

博士後期課程教授

PROFILE

中国天津市生まれ。1994年京都大学大学院文学研究科言語学専攻博士後期課程修了。同志社大学言語文化教育研究センター勤務を経て、文化情報学部へ。専門は言語の仕組みを解明する理論言語学で、国立国語研究所の共同研究プロジェクトにも参加。とりわけ近年は、地理情報科学と比較言語学の手法を用いた言語変化の研究に注力。「地方の方言ほど価値があるので、沖縄や九州、東北出身の学生が来ると喜んで付き合いたくなります(笑)」。

複雑な問題を解き明かす、アルゴリズムを開発

生き物のような言語をデータサイエンスで解明

言葉は、自立・変化・伝播・混合という4つの性質を併せ持つ、まるで生き物のような存在。ゆえに言葉の生態を正確に捉えるには、伝統的な言語学に加え、計量的手法を取り入れた研究方法が求められるようになってきています。
私が近年取り組んでいるのは、地理情報科学に基づいて、時間的変化と空間的変化から言語の伝播を調べる研究です。衛星写真をもとに地図上の分布を調べるだけでなく、人が1時間で歩ける距離などの移動コストも計算し、どのように言語が伝わっていったかを解明していきます。日本では地方に行くほど昔の方言が残っていますが、かつての都である京都から近い地域でも、交通の便が悪ければ昔の言葉が残っているんですよ。
この手法を用いて、中国・黄河流域における言語の伝播プロセスについても調査中です。言語の伝播経路が分かれば、必然的に人間や文化の移動経路も明らかになるため、研究成果に期待が寄せられています。このように言語と情報科学を結び付けることで、新事実の解明につながるケースはまだまだあるでしょう。

実際に地域に入り、足でデータ収集

もともとの専門は言語の構造を明らかにする理論言語学の分野なので、ゼミ生の研究は理論系と方言系とに大別されます。地方出身の学生は自分の生まれ育った地域の言葉を対象にする場合が多く、実際に調査に行ってお年寄りにインタビューし、データを集めてきます。方言の分布を調べるために九州を回った学生もいれば、岐阜県内にある100の村全てを調査した学生もいましたよ。

私が受験生・新入生の皆さんに伝えたい言葉、それは「無冥冥之志者無昭昭之明、無昏昏之事者無赫赫之功」です。これは、「遠大な志のない者は、大した人間になれない。しっかりとした仕事をしなければ、偉大な功績もない」という意味。自分が何のために生きているかをしっかり考えてください。大いなる志を持った人をお待ちしています。