FACULTY MEMBERS
ヒトとはどのような存在なのか?その答えの鍵は、ヒトだけが持つ「ことば」を話す能力のメカニズムにあります。
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理論言語学研究室

星 英仁

博士前期課程准教授

PROFILE

大学3年の時、アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーの著書“Knowledge of Language: Its Nature, Origin and Use”との出会いをきっかけに、人間が言語を生み出すメカニズムに興味を持つ。1995年よりフルブライト奨学生として、アメリカ・カリフォルニア大学アーバイン校に在籍し、博士号を取得。その後、客員研究員として2年間、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学にて在外研究を経験した。専門は理論言語学で、中でも「統辞論(Syntax)」という言語表現を生成する法則について研究している。

脳内で行われる言語生成の法則に迫る

言語表現はどうやって生み出されるのか?

ヒトと他の動物を区別する決定的な特徴の一つは「ことば」です。私たちがことばを話す時、脳の中ではいったい何が起きているのでしょうか?
ことば、すなわち、言語とは、人間がコミュニケーションを取る中で自然に発生したものであり、恣意的につくられたものではありません。そのため、自然法則と同じように、ある一定の規則や原理に支配されています。例えば、日本語は語順を比較的自由に変えることができますが、トルコ語やヒンディー語にも同じような現象が見られます。全く違う場所で発生した言語にもかかわらず共通性があることから、全ての人間には今まで聞いたことがない、新しい言語表現をつくり出す共通のメカニズムが生まれながらにして備わっていると言えるのです。
言語理論の研究では、対象となる言語データを収集し、分析することでことばの仕組みに迫っていきます。目に見えない言語のメカニズムを、目に見える形で明らかにするために、脳の活動状況を感知できる機器を用いて「脳内データ」を集め、理論を検証していくこともあります。

人間にまつわる問題を理論言語学の立場から見つめる

言語データの収集方法の一つが、母語話者へのインタビューです。沖縄の石垣・竹富方言の調査では現地に何度も足を運び、フィールドワークを行いました。この方言は、話者のほとんどが高齢者のため、消滅の危機に瀕しています。最初は文法体系への興味から調査を始めましたが、方言を保存するためのデータベースの作成が可能になります。
また、人間の脳から言語がどのように失われてしまうのかを探るために、失語症やアルツハイマー型認知症患者の言語能力の調査も行っています。この調査結果は、言語喪失のプロセスを解明するだけではなく、新たなリハビリ方法の開発にもつながると考えています。
現在、世界中の言語の数はおよそ6,000、方言も含めれば9,000以上と言われています。ヒトはなぜことばを使いこなせるのでしょうか?その謎は、哲学や心理学、脳科学、生物学、AIなど、人間にまつわるさまざまな分野と深く関係しています。私のゼミでは、言語をめぐる問題について、学生それぞれが自分でテーマを設定し、日々研究しています。ことばやことばを話す人間に興味があるという受験生・新入生の皆さん、知的好奇心をかきたてるエキサイティングな理論言語学の世界へ飛び込んでみませんか?