FACULTY MEMBERS
和歌の57577を単なる文字列と捉え、ゲノム解析のように分析します。意味はいったん置いておいてカタチから入る、そこに新たな発見があるんですよ。
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日本文学研究室

福田 智子

博士前期課程教授

PROFILE

福岡女子大学文学部国文学科卒、九州大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。一度は就職するも国文学研究の楽しさが忘れられず、OLを辞めて研究の道へ。専門は平安時代から鎌倉時代の和歌文学だが、友人でもある情報科学者との共同研究を契機に、文字列解析ツールや和歌のデータベース構築に取り組む。「文字列」が大好きで、文字と思しきものはつい目で追ってしまう。最近では、作成したデータベースを教育コンテンツとして運用する構想も抱いている。

古典文学を計算機プログラムで解析

データで読み解く和歌の世界は、まだまだ未知数

「梅に鶯」「紅葉に鹿」といった主題や枕詞に代表されるように、決まりごとに満ちた和歌の世界。古来より、日本人はそうした美の型を真似し真似されることで伝統を受け継いできました。そのため和歌研究においては、同じ語句や用法が使われた歌を網羅的に集め、考察する手法がとられています。私が大学生の時は、本から句索引を使って用例を手作業で拾っていましたが、現在では電子化されたテキストをコンピュータで解析することにより、膨大なデータを短時間で、しかも正確に処理することができるようになりました。
私はそれらのデータをもとに、和歌を31字の塩基配列のように捉え、文字列解析ツールを用いて分析しています。データベース『新編国歌大観』に収められている和歌は約45万首。研究の歴史の長い古典文学の世界ですが、膨大なデータにはまだまだ未知なる可能性が潜んでいると思います。

無機質なデータが、「作品」に変わる瞬間

ゼミ生は、主に和歌や源氏物語を対象に、データサイエンスの手法を用いて解析します。和歌の「字余り」に着目して法則性を見つけたり、数多くの種類がある源氏物語の伝本の違いを明示したり。そこから歌人論になるか、作品論になるか、登場人物に着目するのかは人それぞれです。同じデータでも、それをどう考察し、どんな発見を導くかはその人次第。独自の解釈を見いだした時、計算機で導き出したデータは、初めて意味を持つ「作品」に変わるのです。

異なる分野との化学反応が楽しくて

私自身はもともと和歌の研究者で、情報科学の研究者との共同研究をきっかけに文理融合の世界に飛び込みました。文化情報学部の面白さは、いろんな分野の研究者が一堂に会し、いろんなものに興味を持った学生たちが集まっているところ。私も他の分野の先生に影響を受けて新たに香道の研究を始めましたし、数学系の先生方と喋るのも面白くて……意外と似ているところがあるんですよね。専門を軸に持ちつつ、化学反応を起こし合う面白さを皆さんにも体験してほしいと思います。「古典好き」はもちろん、「古典ギライ」「文法ギライ」も大歓迎。新しい古典の世界にご案内します。