いま世界では、多様で異なる文化的・歴史的背景や価値観をもつ人々がいかに共生して行くかが大きな課題となっています。そのためには、それぞれの地域の文化の諸現象、そして人間に対する深い理解が必要です。文化情報学研究科では、人間の精神的・知的活動の表現としての文化にかかわる諸現象を新たな視点で分析、文・理の学問分野を有機的に結合させた学際的な高い水準の教育研究活動を展開することで、時代が求める新たな学問分野を開拓して行きます。

文化情報学研究科設立の意義

新たな“知”を創造する文化情報学

学問の進歩発展にともない、学問の領域は細分化されてきました。しかし、こうした細分化は多面的、総合的視野に欠けるという問題も潜在的に含んでおり、近年は、さまざまな領域の知識を融合し、総合的に研究することの必要性が認識されつつあります。同志社大学では、こうした時代の要請に応えるべく、2005年4月、文化情報学部を開設しました。

「文化情報学」―研究対象は、文学、考古学、言語学、美術、音楽、伝統芸能などの文化、そして社会のさまざまな現象です。それを自然科学の分野で用いられている研究手法や分析機器を使い解明して行く新しい学問です。 この「文化情報学」をさらに深化させて、高度な教育研究活動を行う大学院文化情報学研究科を設置することになりました。

文化情報学研究科の理念と研究指導

柔軟な発想を持ちあらゆる分野で活躍できる人材を養成

文化情報学研究科においては、人々の営み-文化-を、単に直感や経験則によってではなく、理論とデータに基づいて科学の視点から捉え、異なる学問分野の知識を有機的に結合して新しい文化理解の方法論を構築し、文化のよりよい伝承と、時代の要請に応える文化の創出に貢献できる研究活動を行い、学際的な研究能力の涵養と、新たな学問分野を開拓できる能力の啓発を教育研究上の理念・目的としています。

これら教育研究上の理念・目的を達成するために、①文化資源学、②言語データ科学、③行動データ科学、④これらの科学探究を支えるデータ科学基盤の4つの特化コースを重点開拓分野とし、各コースが連携して文化の諸事象・現象を対象に高度な教育研究活動を行っています。

具体的には、文化資源が持つ多彩な情報の関連性の総合化、複雑かつ曖昧な言語現象の解明、多様な人間行動の説明・予測・デザイン、数理・情報・統計科学の方法論構築など、異なる学問分野を融合した教育研究活動を展開しています。それによって、前期課程では、柔軟な発想のできる広い視野を有し、社会で生起する多様で複雑な諸問題に的確に適応できる柔軟な発想能力を有する高度な専門職業人の育成を、後期課程では、文化の諸現象を多様な視点で解析し、文化に関する新たな研究手法を開発する能力、新たな学問分野を開拓する能力などを有する、国際社会で活躍できる研究者の育成を目指しています。

前期課程の修了者は社会のあらゆる分野で活躍できると考えており、特に、さまざまな文化事象に対する深い理解力とともに情報分析能力を身につけていることから、公共機関や企業の研究調査解析部門、新聞社・テレビ局など報道関係、博物館・美術館などの機関での活躍が期待できます。また、後期課程の修了者は大学における先端的な文理融合部門、意思決定・立案の為の調査と分析を行う機関、大学や国・地方公共団体の空間情報解析・文化財保護関係部門、博物館・美術館などの研究機関で研究員として活躍することが期待できます。

これらのことを具現化するため、各課程で以下の研究指導を実施しています。

前期課程

前期課程では、所属研究分野の専門的知識のみならず、幅広く高度な知識・能力を身につけさせるため、①文化資源学コース、②言語データ科学コース、③行動データ科学コース、④データ科学基盤コースの4つの特化コースにおける設置科目を幅広く履修させたうえ、研究指導科目である文化情報学研究実験と、研究発表およびそれに関する討論を中心とするシンポジウム科目を必ず履修させ、修士論文の研究指導を実施しています。

また、自らの研究分野の位置づけと問題意識を認識し、自立して研究活動を行うことができる能力を涵養するため、共同研究や産学連携などに参加させ、実践的な環境下で研究指導を受けられるよう配慮するとともに、国内学会・会議で1件以上の発表と、紀要・学会誌等に1件の投稿を達成させ、専門分野のみならず、外国語能力、文献読解能力、論文執筆技法、プレゼンテーション資料作成技法、プレゼンテーション技法、問題解決能力を身につけさせることを目標にして指導を行っています。

後期課程

後期課程においても、博士論文の研究指導だけではなく、文化資源学・言語データ科学・行動データ科学・データ科学基盤の各コースの教育研究内容に関連した専門科目・共通科目をバランス良く履修できるとともに、主指導教授の文化情報学特殊研究と、研究発表および司会を担当するシンポジウム科目を必ず履修させています。ひとつの研究領域だけでなく、関連する分野の基礎的素養を涵養し、文理融合を主軸とした研究方法も修得させ、豊かな学識を有する研究者の養成を目指しています。

また、年1回の国内会議、修了までに国際会議での口頭発表1件、査読付学術誌論文1篇の採録を達成させるなどの客観的な評価も取り入れて、研究能力のみならず、外国語論文執筆技法、外国語プレゼンテーション技法、ディスカッション能力、問題発見・解決能力を身につけることを目標にして指導を行っています。

研究科情報

研究科専攻名文化情報学研究科 文化情報学専攻
開設年度2007年4月
学位博士課程(前期課程):修士(文化情報学)
博士課程(後期課程):博士(文化情報学)
定員博士課程(前期課程):1学年30名
博士課程(後期課程):1学年5名
校地京田辺校地