FACULTY MEMBERS
一見ランダムに見える自然の中にも、規則性のある数列が隠れていたりする。「人」や「心」といった曖昧な対象も客観的に分析することができるのです。
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複雑システム科学研究室

阿部 真人

学部助教

PROFILE

2015年、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系博士課程修了。国立情報学研究所特任研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所研究員などを経て、2022年より現職。高校時代にフィボナッチ数列の解説を目にしたことを機に、数学を用いて生物や人、心について研究したいと考えるように。現在は数理生物学、複雑ネットワークなどをキーワードに、さまざまなシステムが持つ法則性の解明に取り組んでいる。

数理モデルと定量データから「システム」の仕組みを追究

人の脳も、アリの集団もシステムに共通する法則を探る

日常的に耳にする「システム」とは、多数の要素が相互作用しているもの・仕組みのことを指します。約1000億個の神経細胞が情報を交換している人間の脳や、コミュニケーションによって他者との関係性が生まれる学校、多数の生物種が関わり合う熱帯雨林などの生態系――私たちの周りには、多種多様なシステムが存在しています。現実世界にあるこれらを「複雑システム(複雑系)」と言い、私の研究では、その仕組みや機能について明らかにすることを目指しています。
具体的には、人の脳や社会、アリの集団といったさまざまなシステムを対象に、数理モデルを用いた研究と定量的なデータ分析を組み合わせて、理論と実験の両方からアプローチしています。1つの巣に住むアリ1匹1匹に2次元コードを貼り付けて画像解析し、各個体の行動を追跡する実験を行ったことも。システムという観点から見ると、人の脳もアリの集団も共通する法則があるかもしれません。脳というシステムにおいて、どうすれば認知機能の衰えに対抗することができるのか。1つの生態系において、どの生物種がいなくなると系全体の崩壊につながるのか。システムの法則性を解明できれば、人間や社会を深く理解し、未来の状態を予測したり望ましい状態に制御したりすることが可能になるのです。

複雑な世の中の事象を科学をツールに追究していく

研究対象となるシステムが多様なため、その分必要とされる知識も幅広く、さらにシステムが複雑であるほど既存の理論や分析手法では通用しない場面が多々あります。苦労は尽きませんが、その先には「生物とは、人とは何か?」という幼少期からの疑問に対する答えがあると信じています。そうした知的好奇心と、現代社会が直面する諸課題の解決に寄与したいという思いを原動力に、日々の研究に取り組んでいます。
学生にも同じように、日常で感じた素朴な疑問や好奇心を大切にしてほしいと思っています。私たちが生きる世界がいかに複雑で、それを理解することがいかに難しいことであるかを感じながら、科学という方法論で追究していく面白さや奥深さを、文化情報学部で共に味わいましょう。