FACULTY MEMBERS

森の声、里の知恵。地域が受け継いできた声に耳を傾け、利用を通じた自然資源管理を探究しています
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地域環境学研究室
渕上ゆかり
学部准教授
地域研究、環境社会学
PROFILE
2013年、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科東南アジア専攻博士後期課程修了。大阪大学環境イノベーションデザインセンターおよび超域イノベーション博士課程プログラム特任助教、大阪大学大学院工学研究科助教を経て、2025年より現職。フィールドワークの各種手法を用い、地域社会における自然資源の利用変遷およびその理由解明に取り組む。
“文理融合"、“共同研究"といったキーワードをもとに、学際研究促進要因の分析にも取り組んでいる。
地域が育んだ知恵から、持続可能な社会をデザインする
「木を切るな」だけではない。在来知が示す、地域と自然の新しい関係性
人間と自然の関わり方や、自然の利用方法の変遷を明らかにすることが私の研究テーマです。八重山諸島のマングローブ林や、紀伊山地の十津川村を訪れて調査を行うのですが、地域には昔から伝わる知恵、すなわち「在来知」がたくさん息づいています。例えば、薪炭材利用激減で手入れが行き届かず荒廃した日本の里山からは、適度な利用伐採が保全に繋がる可能性が見えてきます。世界自然遺産に認定された地域も、その土地に住む人々が代々受け継いできた方法で環境を利用し続けてきたことで、遺産価値が生み出され、保たれてきたといえるのではないでしょうか。単に「自然を守る」というだけでなく、慣習的に行われてきた自然の利用方法をヒントに、地域にとって本当に持続可能な「自然との関係性」を探しています。

「おばあちゃんの家」感覚で。地域に溶け込み、在来知を掘り起こす
研究を進める上で特に大切にしているのは、地域の方々にじっくりお話を伺うフィールドワーク。一度の訪問では分からないことも多く、調査地の十津川村には毎月のように足を運んでいます。例えると「おばあちゃんの家に遊びに行く」ような感覚でお話を伺い、その土地ならではの「在来知」に触れさせて頂いています。地域社会を広く深く探るためには一般化されたデータ(定量データ)に加え、個人の想いが詰まったお話(定性データ)が必要不可欠。この二つを組み合わせ、どちらに引きずられることもなく思考する事、その先にある何かに会いたくて研究をしているのかもしれません。
「近視眼的」な私たちを、未来へと導くアプローチ
人はつい目の前のことだけを考えてしまいがちです。私たち現世代が考えた「持続可能な未来」とは、その未来に生きる将来世代にとって最適なものなのでしょうか。このような人の特性を踏まえ、過去の知恵である「在来知」と、将来世代になりきって物事を考える「フューチャー・デザイン」を組み合わせ、現在だけではなく「過去・未来」も含めた俯瞰的な視点から研究を行っています。過去から学び、未来を想いながら、現在に生きる地域の人たちと一緒に持続可能な地域社会の姿を探る。地域によって異なる現状に対し、多様な未来の可能性を見つけ出すことが、私の目指すところです。