コロナ禍が明け、学生たちの「留学」への意欲が活性化しています。

学部の短期留学体験者とドイツからの留学生が、それぞれの「留学」を語りました。

参加者

インタビュアー

スピーカー

  • 島内 結和さん

 学部3年次生

  • 中島 楽人さん

 学部2年次生

  • Florian Boehm(フロリアン・ベーム)さん

 デュッセルドルフ大学 交換留学生

Chapter1
留学の動機、そして外国で暮らして感じたこと

Rappo:長かったコロナ禍も終わり、文化情報学部の短期留学プログラムが再開しました。今日はこの制度を利用してドイツのハインリッヒ・ハイネ・デュッセルドルフ大学で1か月間学んだ方2名と、現在交換留学生として文化情報学部で学ぶドイツの学生に集まっていただきました。お互いの体験を共有する絶好の機会だと思います。では最初の質問ですが、みなさんが留学に挑戦しようと思ったきっかけについて教えてください。

島内:中学・高校と英語が大好きで、海外に興味がありました。高校では外国への修学旅行が予定されていたのですが、コロナ禍で中止に…大学生になったら必ず留学したいと考えていました。第二外国語はドイツ語を選択。文化情報学部の短期留学は語学を学ぶこととフィールドワークの二本柱です。高校生だった頃にフィールドワークを経験してとても楽しかったことから、大好きなもの二つに外国で挑戦できるまたとないチャンスだと思いました。

中島:私も語学とともに、この課題解決型のプロジェクトやフィールドワークに惹かれました。また、海外の生活や文化にも興味がありました。それまでにアジア圏の国々を訪れたことはあったのですが、ヨーロッパ圏の国は未体験。そこでドイツの生活を体験できるこのプログラムに挑戦することにしました。

Rappo:逆にBoehmさんは、どんな理由でドイツから日本への留学に挑戦しましたか?

Boehm:もともと日本のマンガ・ゲームなどが好きでした。それらを楽しんでいるうちに、ドイツ語に翻訳されたものではなく、日本語で読んだりプレイしたりしたくなっていきました。ドイツで日本語や日本について学び始めたのもそれが理由です。さらに学んでいくうちに、現実の日本人の生活とマンガやゲームで描かれている世界にはどのような共通点や違いがあるのか、興味を持つように。それが日本に留学しようと思った理由です。

Rappo:近年はそうしたサブカルチャーから日本に興味を持つ人も多いですね。ドイツで日本語を学んでみて、どのように感じましたか?

Boehm:日本語とドイツ語の「違い」にまず興味を持ちましたね。それをきっかけに言語学も学びました。

Rappo:ドイツに留学して、またはドイツから日本に留学して、それぞれの国について留学前に想像していたことと違っていたことなどはありますか?

中島:留学前はドイツの人たちに対して「厳格」なイメージを持っていました(笑)。現地では「日本人とドイツ人のお金の価値観」についてフィールドワークを実施。「お金」に関して教育を受けた人は貯金をする傾向があるか?…ということを明らかにするため複数のドイツ人学生に質問をする必要があり、ドイツの人々が気軽に答えてくれるか心配だったのですが…ドイツの人々は想像以上にフレンドリーでした。また、授業では先生と学生のコミュニケーションがとても活発で、先生が授業中、不意に用意していたお手玉のようなボールを投げてそれをキャッチした学生が質問に答える…といった授業の進め方がとても楽しく、印象的でした。

Rappo:確かに日本の大学と比べて、西欧の大学では先生と学生のやりとりが活発かもしれません。そうした授業を経て帰国後、日本での学びにどのような影響がありましたか?

中島:授業中は常に頭を働かせ、自分なりの考えを持つようにすることを心がけるようになりました。

Rappo:それはすばらしい。島内さんはどうでした?

島内:大学の語学クラスでは、さまざまな習熟レベルの学生が学んでいました。すでに日常会話レベルが完璧な人や、片言でしか喋ることができない人まで…そういうさまざまなレベルの人となんとか対話しようとしたとき、言語だけではなくボディランゲージでかなり会話ができることに気づきました。最初から完璧でなくてはならない、という思い込みが消え、その後の勉強のモチベーションに繋がりましたね。

Rappo:語学の学習以外で、ドイツの文化的なもので何かに気づいたことはありますか?

島内:中島さんと同じで、ドイツの人々と気軽にコミュニケーションできるか不安だったのですが、まったくの杞憂でした。出会った人々はとても外国人に優しかったですね。また、街なみが想像以上に美しかったです。

Rappo:Boehmさんは日本に来てみてどうでしたか?

Boehm:日本には、私が愛好していたマンガやゲームの延長線上の日常があることを確認しました。人々の印象はやはり創作されたものとは違いがありますが、ドイツ人と日本人には似通った部分も多いと思います。総合的に見て、留学前と今で大きく想像と違っていたことありません。

Chapter2
留学先での学びと、肌で実感した「異文化」

Rappo:それではみなさんが留学先でどんな経験をしたのか、学びでも日常生活でも余暇での活動でもいいので、教えてください。

島内:私のフィールドワークのテーマは、「ドイツの『有名観光地』に対するドイツの地元民と観光客のイメージの違い」。ケルン大聖堂やベルリンの公園など有名な観光地に出かけていってさまざまな人々に英語で話しかけ、アンケートを行いました。それまではどちらかと言えば引っ込み思案なほうだったので、知らない人、しかも外国の人に声を掛けるのは緊張しました。でも、なんとかデータを得るために積極的に話しかけることに。アンケートを断られることもありましたが、親身に答えてくださる方も多く、とても実り多い調査になったと思います。

Rappo:余暇の時間にはどんな体験をしましたか?

島内:授業でピクニックやミュージアムに出かける機会があったのですが、週末には友達と国境を越えてフランスやベルギーに観光に出かけました。一か月という短い留学期間でしたが、列車で複数の国を旅するという、ヨーロッパ滞在ならではの経験ができました。

中島:私は音楽が好きで、中高6年間は吹奏楽部に所属し、オーボエを担当していました。なので、せっかくドイツに来たのだから本場のオーケストラを生で聴きたいと思い、ブレーメンまで足を延ばしてコンサートを鑑賞しました。こうした現地の音楽に触れることも、留学の目的のひとつでした。

Rappo:Boehmさんは今、日本でどんな経験をされていますか?

Boehm:ドイツの大学では受講希望の学生数があまりにも少ない場合、授業そのものが中止になってしまうことがあります。その点、私が日本で受講している「ビジネス日本語」は受講生が私一人なのに開講していただいています。この授業では日本の社会の仕組みについて、多くのことを学びました。日常生活や余暇に関しては、ドイツにいたときと同じく、部屋でゲームをしていることが多くて…(笑)1年間の留学の半分もまだ過ぎていないので、これから体験したいと思います。

Rappo:それではみなさんが留学先で体験した「異文化」について、印象に残ったことなどを伺いたいと思います。

中島:ドイツでは環境への配慮が日本よりもはるかに生活と密着していて、とても意識が高いと感じました。たとえばスーパーに行くと、環境に配慮した商品が「A」から「D」までランク付けして売られています。また近年では日本でもかなり一般的になりましたが、エコバッグやマイボトルを持っている人が今の日本よりも圧倒的に多かったですね。

島内:よく言われることですが、日本には「空気を読む」という文化がありますよね…たとえば電車やバスなどで座席に座っている人のとなりが空いていると、そこに自分が座っていいものか?と、考えてしまうことがあります。私は日本で、こういうことにすごく気を遣ってしまうんです(笑)でもドイツではそういう気遣いをする必要はありませんでした。人々は「そこに座っていいですか?」とはっきり意思表示をします。その後、となり同士の人がまったく知らない者同士で会話を始めるのを見て、すごく居心地のいい文化だな、と羨ましく思いました。

Boehm:あまりいい話ではないのですが…(笑)携帯電話を契約するために銀行口座の開設をしようとしたのですが、とても手続きが煩雑で困りました。ドイツは日本以上に電子化が進んでいます。PayPalという電子決済サービスがあるのですが、これは銀行口座がなくてもアカウントを作ることができます。ほぼこれひとつで買い物を済ますことができますね。

Rappo:島内さんは公共交通機関で日独の文化の違いを発見しましたが、Boehmさんは日本の電車などで「これはドイツと違う」と感じたようなことはありますか?

Boehm:そうですね、日本の電車が時間通りに来るのはほんとうに驚きです(笑)。あと、私は日本の電車では島内さんとは逆に自分が「空気を読む」ことが多くて…(笑)知らない人のとなりに座るには、いろいろと考えて雰囲気を見ながら座りますね(笑)

Chapter3
留学で得た成長、それを今後の学びや生活にどう活かすか

Rappo:みなさんが留学経験で得たこと、学んだことは何でしょうか。

島内:フィールドワークで50人ほどの見知らぬ人に英語でインタビューを行ったことですね。自分の英語でのコミュニケーション能力に自信がつきましたし、何よりすごくメンタルが鍛えられたと思います。

中島:授業では「自分の意見を伝える」術を身に付けられたと思います。またドイツ人のフレンドリーな側面を知ることができたことも大きな発見でした。

Boehm:主に「ビジネス日本語」の授業で得た知見なのですが、日本の雇用制度…とくに就職活動や一括採用のシステムについて学べたことは大きかったですね。就職活動のスケジュールも学び、模擬面接も実際に受けてみました。とても緊張しましたが、そこからの「日本で就職する」という選択肢が自分のなかで芽生えました。

Rappo:ドイツに行ったお二人、留学中は日本の食事などは懐かしくなかったですか?(笑)

島内:ドイツの料理は想像以上においしかったし、またデュッセルドルフには日本人街があり、たくさん日本食レストランがありました。また、留学先で知り合った韓国の友達とスーパーなどで買ってきた食材を、2人で調理して食べたのもいい思い出です。

中島:けっこう物価が高いので、あまり外食できませんでした。その代わりスーパーで買ってきたソーセージを自分で焼いて食べていました。やはり本場だけあって、すごくたくさんソーセージの種類があるんです。いろんなソーセージを楽しむことができました。

Boehm:私も留学生活中は節約のため、あまり外食していません。ほぼ自炊していますね。スーパーでお弁当を買って食べることもあります。あれは美味しいですね(笑)

Rappo:みなさんは留学経験で得た経験や知見を、これからどのように活かしていきたいですか?

中島:ドイツにおける環境への意識の高さにとても感銘を受けたので、ドイツの取り組みを日本に伝え、導入に結び付けていくにはどうすればいいかを考えています。たとえばドイツではリファンド制度というものがあり、空きペットボトルや空き缶をスーパーに持って行くと、お金がキャッシュバックされるんです。道に落ちているペットボトルもキャッシュバック対象になるので、ドイツではほとんどポイ捨てされた空き缶や空きペットボトルを見ることはありません。これをうまく日本に導入すれば、メリットつきで環境への意識を高めることができるし、街のポイ捨てもなくなるのでは、と思っています。

島内:私が得たのはやはり、語学力の向上。とくにリスニング力がアップしたのを実感しています。これからもドイツ語の勉強を続け、社会に出てからも「教養」として勉強を続けていきたいと思います。また、フィールドワークのインタビューからこれまでになかったような積極性が身に付いたことも大きいです。これを足掛かりに、これからもどんどん自分の殻を破っていろんなことに挑戦していきたいと思います。

Boehm:日本語そのものはもちろん、日本語でのリアルなコミュニケーションをいま学んでいる最中です。たとえば、私たち外国人が日本語で会話していると、相手の話に「相槌」を打つタイミングがほんとうに難しい(笑)

Rappo:ああわかります!私も日本に来たばかりのときはそれで苦労しました(笑)

Boehm:そういうことも含めて、日本ではコミュニケーションにおける礼儀やマナーが煩雑で困難なことも多いですが…将来的に日本で働き、日本で生活する、ということも考えるようになりました。一度、ドイツに帰国して学位を取得してから、また日本に戻ってきてそのまま住み着いてもいいかな、と考えています。

Rappo:忌憚のない意見が聞けて、お互いの認識が深まったとてもよい座談会でしたね。私は文化情報学部の国際主任を務めています。これからも本学部の学生がどんどん留学にチャレンジし、世界を知ってくれることを望みます。そしてBoehmさんのような海外からの留学生と本学の学生が交流する機会を、たくさん持てるようになるといいですね!

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