様々なシーンで活躍する文情の学生たち。

彼らは社会に対して、何を感じ、どう考え、どのように行動しているのでしょうか。

文化情報学部・文化情報学研究科の学生たちが社会を見つめるリアルな視点に迫ります。

参加者

インタビュアー

スピーカー

  • 酒井 俊樹さん
    大学院(前期課程)2年次生 ボランティア支援室 ARCO 学生スタッフ
  • 柏木 裕美子さん
    学部1年次生 スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室 学生スタッフ
  • 増田 瑞帆さん
    学部1年次生 スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室 学生スタッフ
  • 油谷 真花さん
    学部4年次生 留学生課 SIED 学生スタッフ
  • 三輪 歩希果さん
    学部3年次生 留学生課 SIED 学生スタッフ
  • 三輪 玲以佳さん
    学部3年次生 留学生課 SIED 学生スタッフ
  • 付 詩貽さん
    学部1年次生 留学生課 SIED 学生スタッフ

※本文中では敬称略

目次

Chapter1ーもっと知りたい、もっと深めたいーその想いが活動を始めるきっかけに

Chapter2「実践」だからこその厳しさが生み出す新たな気づき

Chapter3文化情報学部で磨いた価値観が、社会の視野を広げてくれた

Chapter1
もっと知りたい、もっと深めたい
その想いが活動を始めるきっかけに

伊藤: 今回の座談会では、様々な課外活動で活躍されている皆さんに集まっていただきました。多様な活動を行う中で、文化情報学部での学びがどのように生きているのかをお聞きしたいと考えています。早速ですが、まずは皆さんの普段の活動内容を教えてください。

酒井:「人の力になること」の楽しさを知ってもらうという目標を掲げてボランティア団体ARCOを運営しています。私たち大学生の若い力を必要としている場所に届けるのはもちろんのこと、学生自身も成長できる団体運営を大事にしています。

三輪(歩): 私たちの団体SIED(Student Staff for Intercultural Events at Doshisha)は、国際交流を目的とした企画を開催しています。留学生と一緒に学内でモノづくりをしたり、海外文化体験をしたりなど、イベントの多彩さが魅力の一つ。学生が主体となり、企画立案から運営まで行っているのも特徴です。

柏木スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室(通称:SDA室)では、障がいのある学生に対して、例えば授業中のノートテイクのような支援活動を中心に活動しています。どのような方でも、学生生活を楽しく過ごせるよう支援するのが私たちの役目です。

伊藤 : ありがとうございます。活動内容は多種多様ですが、共通しているのは「人を支えたい」という思いですね。皆さんがそれぞれの活動をはじめようと思ったきっかけはどんなことだったのでしょうか。

: 私は留学生なので、SIEDとの初めての出会いはイベントの参加者としてでした。熱心に対応するスタッフの皆さんの姿勢に感銘を受けたことを鮮明に覚えています。安心して交流を楽しむと同時に、「私も他の留学生を支えたい」という思いが芽生えたのがきっかけです。

伊藤: 実際にスタッフとして働いてみて、どのように感じていますか。

: 実際運営する側になってみると、会話の中で輪に入れていない人はいないかなど、大小様々な点に気を配りながら運営するのが大変です。そんな時は、私が参加するきっかけになったスタッフの皆さんの姿を思い出すようにしています。参加者に寄り添うことを意識すると、参加者も自然とコミュニケーションに加わってくれるようになりました。同じ視点に立つことで、話しやすい環境ができたのだと思います。そのため、今は硬くなりすぎないように、参加者と一緒に運営側も楽しむ姿勢を大事にしています。

酒井: 人とのコミュニケーションを通じてでないと得ることができない、楽しさや充実感はありますよね。私が「人の力になること」の楽しさを知ったのは、高校生の時でした。「この楽しさをもっと多くの人に知ってほしい」という思いで、大学に入学してすぐに団体を立ち上げました。ボランティアというとハードルが高いように思われがちなのですが、実は誰でも簡単にできます。人の喜ぶ顔を見ることができるこの活動の楽しさややりがいを、もっと多くの同志社の学生に広めたいという思いが、私の原動力です。

増田: やはり楽しさややりがいは、活動を続けるうえで不可欠だと思います。私の場合は特に何か強いきっかけがあって始めたわけではありません。ただ、人を支える活動がしたいと漠然と考えていました。具体的に何をすべきなのか分からず悩んでいたところ、先輩から紹介してもらったのがSDA室でした。今は、聴覚障害を持った学生のサポートとしてノートテイクに挑戦しています。授業は一回きりのため、その責任は重大です。プレッシャーを感じますが、お礼を言われた時の嬉しさはひとしおです。人の役に立てたということを実感できる瞬間でもあり、活動のモチベーションにもなっています。

伊藤: 皆さんが実体験を通して抱いた思いや、目標がそれぞれの活動に表れているのですね。

Chapter2
「実践」だからこその厳しさが生み出す新たな気づき

三輪(玲): こういった活動をしていると、自身の成長も日々感じることができるのですが、皆さんはどうでしょうか。

三輪(歩): そうですね。例えば、私たちの団体では半年に1回企画会議を開きます。一人ひとり企画書を出して、メンバー全員で意見を出し合いながらブラッシュアップします。なぜ私たちの団体でこの企画をやる必要があるのかということや、私たちならではの価値を生み出すための工夫を企画書に盛り込まなければなりません。とても難しいのですが、深く考える力や道筋立てて考える力が身についたと実感しています。

伊藤: 学生だけで企画の立案から実施まで行うのは、すごいですね。自分達で最初から最後までやり遂げるとなると、考えるべきポイントはたくさんあると思いますが、一番難しいのはどのような点でしょうか。

油谷: SIEDの活動で最も難しいのは、参加者数を増やすことですね。企画会議でもたびたび議題にあがります。

酒井: 私たちも同じポイントで頭を悩ませることが多いです。参加さえしてくれれば活動の楽しさを感じてもらえる自信はありますが、参加するまでのハードルを高いと感じる方が多いのは常々体感しています。

三輪(歩): SNSを使って発信したり、学内でチラシを貼ったりなどの宣伝はしているのですが、イベントへの集客は苦戦することがありますね。

三輪(玲): 私たちは、文化情報学部生の大きな武器である統計を改善策に結びつけられないかと考えているところです。

増田: イベント開催後にアンケートに回答してもらい、そのデータを分析することはできますよね。

油谷: 確かにそうですね。アンケート結果に加えてイベントの開催時間や場所、企画内容などがどのように満足度に関わっているのかなど、様々な視点から分析することで、新しい企画を考える時の根拠にも使えるかもしれません。また、別の切り口として団体自体の名前や活動内容の広報といった、いわゆる【知名度】の部分でも工夫できる点はたくさんありそうです。

: その観点で言うと、私たちは知名度を上げるために、イベントお知らせのポスターには団体のロゴマークを必ず目立つようにレイアウトしたり、学生の目に留まりやすい国際交流ラウンジに広告看板を出したりして印象に残る広報を心掛けています。これは学部で学んだ「認知科学」から着想した手法なんです。その甲斐もあって、少しずつですが、団体の存在が学生に浸透していると感じています。

三輪(歩): SNSの使い方も大事ですよね。選択する媒体や発信する時間によって効果が異なるため、一番効率的なアプローチとは何かを団体内で話し合うことがたびたびあります。私たちのアカウントのフォロワーには届くのですが、フォロー外の方へどのように届けるかが目下の課題です。

三輪(玲): 人通りの多いところで活動を行うのはどうでしょうか。偶然通りかかった人の目に留まるイベントを開くことで、興味を持ってもらったり、私たちのことを知ってもらうきっかけになりそうですよね

伊藤: 皆さんの話を聞いていると、団体の枠を越えてアイデアを出すことで新たな突破口が見つかることもありそうですね。自由に意見を交換できる場を用意したり、コラボレーション企画を考えたり、などの取り組みも面白そうです。

Chapter3
文化情報学部で磨いた価値観が、社会に対する視野を広げてくれた

三輪(玲): 「人を支えること」について、まず自分たちが考えることで活動の意義をもっと具体的に広報メッセージに込められるのではないでしょうか。活動を広く知ってもらうための、一つのキーポイントにもなると思います。

伊藤 : なるほど。では、皆さんは「人を支えること」について今どのように考えていますか。

酒井: 例えば、文化情報学部の授業ではあらゆることを分析しますが、どうしても私自身は「平均的な傾向」のような俯瞰的な視点に偏ってしまいがちでした。しかし、ボランティアで現場に立ってみると、机上でデータを触るだけでは見つけることのできない、重要な課題も感じ取れるようになってきたのです。そういう意味では文化情報学部での学習と、私が行っているこのボランティアの活動とはお互いを補完し合う形で私の視野を広げてくれるものだと思います。

伊藤 : 確かに、実際に問題が起きている現場に目を向け、自分のすべき行動を見極めたうえで実行に移す。こういった意識は、課題がどんどん細分化している現代社会に欠かせないものですよね。

油谷: 文化情報学部の授業では、研究対象となる事象が「なぜこのようになったのか」ということを、データを通じて紐解きます。その中で身につけたのが、データひとつひとつを丁寧に見つめる姿勢だと感じています。こういった経験が、普段の活動の中で物事を様々な面から考えて行動するという姿勢に繋がっている。他の人のお話を聞いて、そのように感じました。

酒井: 「人を支えること」を考えた時、真っ先に浮かんできたのは、人間の未来を想像する文化情報学部の授業でした。社会的弱者を救済する仕組みの整備が進む一方、逆に優遇されすぎているのではないかと思う人も存在しています。今の社会にはこうした壁がたくさんあるため、このままだと人間同士の分断が加速してしまうというお話が特に印象に残っています。この状況を変えるために自分には何ができるのか、どのように動くべきか、普段の活動を通してもう一度考え直してみたいです。

増田: 私はまだ1年生なので、皆さんがおっしゃるような専門的な授業は本格的には始まっていません。ですが、統計を用いて文化を解析する視点は私の世界を大きく広げてくれました。「文化を研究するのは文系の思考」という凝り固まった考え方から脱却できたのです。私の行っている「人を支える」活動も、文化情報学部ならではの新たな見方で捉え直すことができそうです。

三輪(歩): 文化情報学部ならではというと、文系の視点と理系の視点を掛け合わせることで、新たな文化的な価値を生み出すというアプローチは、SIEDが行う国際交流と根底の部分で通じているのではないでしょうか。国籍や考え方など、様々なバックグランドを持つ留学生と日本文化を体験するイベントを企画したことがあります。その際、留学生が自分とは異なる部分に面白さを感じていて驚くとともに、自国文化の新たな魅力に気づかされました。多彩な視点で捉え直すことで新たな価値発見へと繋げる手法は、文理双方向から文化理解を試みる文化情報学部の学びと似ていると今日改めて感じました。

: 私も、異なる視点や感じ方が組み合わさることで新たな面白さが生み出されるシーンには何度も遭遇しました。国際交流イベントでは、参加者同士の交流がメインです。同じ話題でも参加者の個性や視点によって、会話の内容が大きく変わります。違う考え方であってもそれを押し付けることなく理解し合うことで、全く新しい答えにたどり着くことが幾度もありました。異なる考え方が融合し、新たな解へとたどり着くこの過程のなかで、文化情報学部で学んだ多角的視野の更なる広がりを感じています。

伊藤 : ありがとうございます。今日一緒にお話しする中で、皆さんご自身で考えを深めていらっしゃることを知ることができました。普段の活動を通して文化情報学部の学びにもっと磨きをかけたり、逆に活動から得た新たな視点で改めて文化情報学部の学びをとらえ直したり。日々、自ら成長しようとする姿がとても頼もしいです。 今回の座談会で、ほかの団体の方々との意見交換を通して、さらに視野が広がったのではないでしょうか。得た知見をそれぞれの団体に持ち帰り、今後の活動にぜひ活かしてください。今日は本当にありがとうございました。

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