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スマホやテレビでふだん目にする「映像」。映像をデータ化し、社会背景をふまえて分析すると、見慣れた映像の新しい姿がみえてきます。
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映像文化論研究室

佐野 明子

博士前期課程准教授

PROFILE

兵庫県出身。大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(言語文化学)。桃山学院大学専任講師・准教授を経て、2020年現職。2020-22年に国際日本文化研究センター客員准教授を兼任。専門は映像文化論。共編著に『戦争と日本アニメ:『桃太郎 海の神兵』とは何だったのか』(青弓社)などがある。

映像文化を科学的に分析し、社会との関わりを考える

映像を“データとして見る”ということ

映画やアニメーションなどの映像作品を見る時、みなさんはどこに注目しますか?絵がきれい、面白い、などの主観的な見方ではなく、客観的な論拠に基づいて映像を捉える方法もあります。たとえば、スタジオジブリの『魔女の宅急便』では、主人公の顔が大きくうつるクローズアップは全編を通して2回しか登場しません。他の映像作品と比べて極めて少ないと思いませんか?また、日本のアニメーションで初めて本格的な「死」が描かれたのは、第二次世界大戦末期でした。このように、映像をデータ化し、なぜそのように描かれるのか、どのような効果が生じるのかという問いを明らかにしていくことができます。数値やデータ、統計学的アプローチに加えて、社会の動向や、文系学問の豊かな蓄積(哲学、歴史学、文学、美学、民俗学、映画学、社会学等)を参照する姿勢も欠かせません。多角的な視点から映像を捉えると、ふだん見慣れた映像の新しい姿がみえてきますよ。

映像文化と社会の関係を探り、研究基盤を形成

私は学部では理系に所属していましたが、旧東ドイツ出身の先生による映像文化論の授業が知的刺激に満ちていて、映像文化研究に進みました。チェコの映像文化と東西冷戦の関係を探るテーマから出発し、アジアやアメリカにも対象を広げています。戦時期の日本のアニメーションに映画学の手法を応用し、その全体像を浮かびあがらせる研究も手がけました。そのときに作成した、雑誌・書籍記事のデータベースはジブリ美術館のHPで公開されています。映像文化はいまや様々な研究分野で取り入れられていますから、これからも研究の進展を支える基盤を形成し、社会貢献につなげていきたいです。

教科書が真実とは限らない。社会の課題に自ら気づける人に

ゼミ生は、映画やアニメーションを対象とし、映像文化研究の手法を身につけて分析します。特撮(ウルトラシリーズ)とイラク戦争の関連を分析する学生もいますよ。映像をどのように捉えるかはみなさんの自由。教科書や論文は「仮説」であって「真実」ではありません。「あたりまえ」と思われていることに疑問を見出し、建設的な議論を展開していく姿勢が大切です。そうして培われた力は、卒業してからもきっと役に立つと思います。