FACULTY MEMBERS
一度会ったことのあるロボットに「久しぶり」と言われると何だか親しみを感じますよね。関係性をうまくデザインして構築することが社会への応用において重要なのです。
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ソーシャルロボティクス研究室

飯尾 尊優

博士前期課程准教授

PROFILE

2012年同志社大学大学院工学研究科博士課程情報工学専攻修了。博士(工学)。株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科助教、筑波大学システム情報系助教などを経て、2021年から現職。これまで、ロボットによる「褒め」が人間の技能向上に寄与することや、ロボットとの英会話練習によりスピーキング能力が向上することを明らかにしてきた。

人間とロボットの相互作用のあり方を究明する

人間の行動原理を理解した上でロボットが持つ機能をデザイン

二足歩行ロボットやペット型ロボットとの触れ合いは、私たちに不思議な感覚を与えます。たとえ相手がプログラムを組み込まれた機械だと分かっていても、それ以上の何かを感じる人も多いでしょう。それは、人間はロボットを社会的な存在――コミュニケーションをとり、関係性を結ぶに足る存在だと認識しているから。私の研究は、人工的な存在であるロボットが人間の認知や行動に与える影響を理解し、ロボットの活用によって人間の生活を豊かにしようとするものです。
まずは実験室で厳密に条件を整え、人間の根本的な行動原理を明らかにします。その後、実環境下での実証実験を行いますが、実験室で得られた知見をダイレクトに生かすのは困難です。そうした中でも科学的な裏づけをもとに仮説を立て、被験者一人ひとりの生の声を拾い上げてデータを収集していきます。こうしたプロセスを繰り返し、どういった場所にどのような役割を持ったロボットを設置するのか、どのように人間との相互作用を生むのかを検討。それがロボット活用におけるデザインなのです。

人間社会の課題を解決するために

私が目指すのは、人間がロボットに置き換わった世界ではありません。あくまで主役は私たち人間であり、ロボットは人と人とをつなぐサポートを担う存在であるべきです。のび太はドラえもんと交流したから成長したわけではなくて、ドラえもんという存在が他の登場人物との関係性を媒介してくれたから成長を遂げられたのです。ロボットには人間と社会的な関係性を築く力があり、その力によって人間社会の課題を解決することができるはず。「ロボットを通じた良心あふれる世界の実現」こそ、私が研究を続けるモチベーションなのでしょう。
ロボットの研究は人間の研究でもあります。心理学や脳科学、社会学、哲学などの知見が組み合わさり実体としてアウトプットされたのがロボットとも言えます。人間社会に受け入れられるロボットを生み出すには、学際的な考察が不可欠。学生にも、技術の開発というよりは周辺領域を融合させる研究に取り組んでもらいたいと思っています。
イノベーションを起こすには、まず決められた枠組みの中でしっかり学ばなければなりません。文化情報学部で基礎を身につけ、その上で新しい価値を創造する力を養っていきましょう。