FACULTY MEMBERS
混ざり合い、影響し合う、まるで生き物のような文化。その多様性と融合のさまを、統計学や認知科学の手法で明らかにします。
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比較文化研究室

田口 哲也

博士後期課程教授

PROFILE

1954年生まれ。1977年神戸大学文学部文学科英米文学専攻卒業、1981年大阪大学大学院博士課程中退。1994~96年、イギリス・ウォリック大学英国文化・比較文化研究センターにて在外研究を経験。折しも文系の学問が従来のテキスト批評の枠を超え転換を遂げつつあった時期で、自身も比較文化論、ジャパノロジー、未来社会学などの研究を開始。著書に『ケネス・レクスロス中心の現代対抗文化』(国文社)『メディア学の現在』(世界思想社)などがある。

文化の多様性と融合のダイナミズムを解明

データから見えてくる、多文化社会の姿

アメリカやイギリスなど英語圏の国では、1960年代以降急速に、さまざまな文化、人種、宗教が混在する多文化社会へと変化していきました。この変化は最初にポピュラー音楽、映画、ファッションなどの若者文化や、広告写真、テレビなどの大衆文化の中に現れ、少し遅れて文学や演劇などの中に出現し、新しい文化として定着することになりました。
このようにグローバル化が進む現代社会においては、ある国の固有の文化は他の文化と混じり合い、影響し合って成り立っていきます。一国の文化がいかに広がり受容されたのか、他国の文化とどのような違いがあるのか。多種多様なデータに基づいて追っていくと、たくさんのユニークな発見に出会うことができます。

世界中に足を運び、大量の資料をもとに分析

難解な詩から宗教問題、パンクやゴスロリのファッションまで、私の研究の幅はかなり広く、「専門は何ですか?」と聞かれても簡単には答えられません。データを収集するため、日々大量の書物、雑誌、新聞などに目を通す一方、海外を訪れて実際に観察を行うこともあり、これまでタイ、イギリス、オランダ、アメリカなどを拠点にしてきました。そうした経緯もあり、研究室の書棚は世界各地の“モノ”であふれています。学生たちに説明する際、何より実物を見せた方が伝わりますからね。

多様だからこそ、刺激し合える環境がある

卒業研究では文化的なテーマを選び、統計学、あるいは印象評価実験などの認知科学的手法で分析します。対象は、美術、ロック史、サブカルチャー、絵本、デザイン、映像、都市伝説、スポーツなど何でもあり。お互いの研究分野がばらばらなので、他のゼミ生の発表を聞いて知識や興味がどんどん広がるのも当研究室の醍醐味です。
私個人の目標で言うと、これまで研究成果を論文で発表したり、各国政府へ文化政策の提言を行う形で社会に貢献してきましたが、今後は日本文化を英語で発信することにも挑戦してみたいですね。特にこれまで過小評価されてきた日本の芸術家について、海外で知名度を上げるために力を尽くしていきたいと思います。