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文化の多様性と融合のダイナミズムから、世界の“今”と“未来”を見つめる

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文化の多様性と融合のダイナミズムから、世界の“今”と“未来”を見つめる

ひとつの文化が他の文化とどのように融合して新しい文化が誕生するか

変るものと変らないもの

 いわゆる「上履き」というのがあります。土足であがってはいけないので、靴を履き替えるというやつです。私たちは当たり前のように思っていますが、欧米人からすると、これはとても奇妙な習慣です。欧米では子どもが生まれると靴をプレゼントしたりしますが、老人になっても生まれて初めて履いた靴、「ベビー・シュー」と英語では言いますが、その靴を大事に持っている人がたくさんいます。これは、家の中でも靴を履いたまま生活する習慣があるからですが、考えてみると、私たちは学校など公の場所では土足のままですが、自宅に帰ると大部分の人は靴を脱いで生活しているはずです。

 明治になって日本は近代化を図り、侍はちょんまげを切り落すことになりましたが、実は私たちは見かけは欧米人の真似をしながら、結構「核」になる部分では伝統的な文化を守っているのです。こう言った事例は他にもたくさんあります。例をあげ、説明を始めると何日もかかりますので、それは私の講義などにとっておくことにしておきます。


純粋な“固有の文化”とは

 先に挙げたのは日本の例ですが、他のアジア諸国、アラブ諸国、ヨーロッパ、アメリカの中でもそれぞれ色々な固有の文化が他の文化と微妙にミックスしてそれぞれの文化が成り立っています。よく日本文化と言いますが、こういった他の文化圏からの影響を「らっきょ」の皮をむくように一枚一枚はいでいきますと、純粋な日本文化とは何だろう?と思うはず。これはイギリスでも、イタリアでもモロッコでも、タイでも、ベネズエラでも、どこでも同じです。文化とは結局のところ様々な文化的な要素が複雑に融合して出来上がっている、とても面白いものなのです。しかもこの融合は現在進行形です。10年前にはとても考えられなかった髪の毛の脱色は今では当たり前になりましたが、これにもちゃんとした理由があります。その答えは私の講義で皆さんと一緒に考えて出してみたいと思います。


文化の未来を予測する

 私は英米文学の研究から研究者として出発しましたが、例えばイギリスやアメリカといった英語圏の国では1960年代以降急速に、様々な文化、人種、宗教が一緒に存在する、多文化社会へと変化していきました。この変化は最初に、ポピュラー音楽、映画、ファッションなどのストリート・カルチャー、広告写真、テレビ、などの大衆文化や若者文化の中に現れます。そしてそれは少し遅れて文学や演劇など、どちらかというと二十世紀以前に最盛期があった表現手段の中に表れ、新しい文化として定着していくことになります。従って私の研究対象は、かなり難しい詩の読解や宗教問題から、パンクやポスロリのファッションまでかなり幅が広いのですが、それらの文化現象を最新の文化理論を使って説明します。そして、最終的には未来社会はどのようになっていくのかを予測することになります。

 そのために大量の書物、雑誌、新聞などを読み、そして実際に世界中の様々な場所に足を運び、現地調査を行なっています。研究を進める上で、様々な国の、様々な職業に就く人々と絶えずメールや電話で連絡を取り合っていますので、1年中睡眠不足に悩んでいます。研究成果は論文、書物の形で一般に還元する場合と、各種のシンクタンクへの報告や、各国政府の文化政策への提言という形をとる場合の2種類があります。