ことばはヒトという種だけが持つ重要な性質です。私たちは普段から当たり前のようにことばを用いて生活しているため、
ことばについて深く考える機会がほとんどありません。しかしながら、数学者ライプニッツの「ことばは心を映し出す鏡であ
る」という言葉からもわかるように、 ことばの性質を深く考察することによって、我々の心/脳の仕組みを少しでも明らか
にできる可能性が出てくるのです。ことばの知識とは何か、その知識はどのように獲得され、使用されているのか、ことばの
知識が脳内でどのように働いているのかなどの根源的な問いに対する答えを明らかにしていくことが理論言語学の課題です。
星研究室ではこれらの問題に 様々な観点から取り組み、探究を行っています。
ところで、星研究室で卒業研究を取り組む際に、大切な「約束事」が2つあります。1つは『自分の力で研究テーマを見つけ
る』ということです。最終的には私とアポイントメントを取って選んだテーマについて議論し、決定してもらうことになりま
すが、まずは自分で考えることが必要です。テーマを見つけるためには深く考えることが要求されます。そのテーマを探求す
る価値がどれだけあるのか、どのような結果が得られると予想できるのか、予想した結果が何を意味することになるのか、そ
もそもどうしてそのテーマをやってみようと思ったのかなど、考えを巡らせ、その研究が持つ可能性について思考実験するこ
とにより、卒業研究を最後までやり抜く力を身につけることができるのです。卒業した後に、その考える力・最後までやり通
す力が社会の中で生きていくための大きな武器になっているのだということに気づいてもらえると思います。もう1つは『少し
でも感動できるような研究をしよう』ということです。「感動」なんて大げさかもしれませんが、英語だと「感動」は"move"と
訳すことができますので、もう少しくだけて言えば、「心を動かす」ということになるかと思います。卒業研究の内容の一部
は「コロキアム」という授業で発表することになりますが、その時に「あ、おもしろいなあ」とか「こんな研究を やってみた
い」とか、研究している本人だけでなく、聴いている他の人の気持ちを少しでも動かすことができるような研究を目指してほし
いと思います。アカデミックな内容だけが人を感動させるのではありません。時間と労力をかけ、「少しでも理解したい、明ら
かにしたい」という思いを込め、あきらめずに研究していけば、その真剣さが他の人にも必ず理解してもらえます。それも感
動を生み出す要因の1つなのです。感動したり、感動させたりすることによって、そこから何かを学びとり、これからの人生
をもっと豊かにしていくことができるはずです。
以下に2008年度星研究室のゼミ学生が取り組んでいるテーマの中から4つの研究を紹介しておきます。ことばに興味がある人、
ヒトに興味がある人、いろいろなことがらを深く、徹底的に考えることが好きな人、「星組」で一緒に勉強してみませんか。
<文法理論:ことばの知識とは何か>
「若者ことばの言語構造」
「短縮語」を取り上げ、語の構造及び生成過程について研究する。「コピる」、「けばい」など、若者が頻繁に使用する短縮
語には元の語の最初の2つのモーラ(拍)と最後の1モーラを併合するという形式が一般的であるが、全ての語がこのように
短縮できるわけではない。短縮可能な語と不可能な語の違いを大量のデータから明らかにすることを目指す。
「方言文法の研究」
標準語を方言に「翻訳」する際、違和感が生じることがある。主な理由として、語彙の持つ意味の違いが考えられるが、本研究
では文法構造の違いに焦点を当て、特に、山口方言に特徴的な助動詞「ちょる」や「よる」を中心に、アスペクト形式の不一致
によるものだと仮定し、理論研 究をおこなう。最終的には研究成果に基づき、山口方言と標準語の翻訳ソフトの構築を目指す。
<言語運用理論:言語使用のモデル化>
「恋愛感情に起因する言語のモデル化」
我々は、恋愛感情を持った相手に対して、状況や相手の気持ちに応じて、自分の気持ちをどのように表現しているのだろうか。本
研究では、恋愛感情が意識的に表出されている言語表現に焦点を当て、恋愛小説から会話を抽出し、様々な恋愛感情と言葉の関係
を調査する。発見した法則が 一般化出来るかどうかを検証するため、アンケート調査も行う。
「感動詞から人の心を読み取る」
感動詞の使用から相手の心情を読み取るモデルの構築を試みる。小説・テレビドラマ・インタビュー番組等のメディアを対象とし、
会話データを収集する。会話の様子や雰囲気にも注目し、どのような状況でどのような受け答えが行われ、「へぇ」「ほぉー」
「ふーん」などの感動詞がどのように使用されているのか考察する。
