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“人間”、この究極の情報処理システムの秘密を解く

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“人間”、この究極の情報処理システムの秘密を解く

心理学をベースに学際的、複合的な人間理解にアプローチする

心理学とはどういう学問か

 「専門は何ですか」と聞かれて「心理学です」と答えると、よく「じゃあ今何考えているか分かる?」などと続けられることがあります。残念ながら、さっぱり分かりません。しかし、「人が他人の考えていることを当てようとする時にどういう手がかりを使っているのか」についてなら、調べることができます。実験し、データを集め、推論するのです。そこで重要になるのが、人間を情報処理システムととらえ、実験によって計測したデータから、意味のあることを見つけ出していくというプロセスで す。


マ−による3つの水準

 では、どのような基準をみたせば「人間」という情報処理システムを理解したといえるのでしょうか。 デビッド・マー (David Marr) は、Vision(邦訳『ビジョン−視覚の計算理論と脳内表現』乾・安藤訳、産業図書、1987)において、情報システムの理解は3つの水準でなされるべきだと述べています。1つ目は計算理論の水準。どのような問題が解かれるべきかを明らかにするレベルです。2つ目はアルゴリズムの水準。計算理論によって明らかにされた問題をどのような手順で解いているかと関係しています。従来の心理学的な研究は、いわばこのアルゴリズムの水準を扱っているといえます。3つ目は「実現」の水準。これは神経科学による脳のメカニズムの解明により達成されると考えられます。これら3つの水準は、互いに密接に関連しています。こうした考え方から、人間の情報処理における学際的な研究の重要性がクローズアップされています。


出発点は「視点」に対する興味

 大学生の頃、「視点」ということに大きな興味を持っていました。能楽部に属していたのですが、舞台に立って仕舞を舞う時、自分が舞台のどの地点にいるかを意識するという行為の難しさを常に考えていました。舞っている時に見えているのは、自分の目で見た客席という景色なのですが、自分の舞はあくまでも別の「視点」からの景色に左右されている…という問題です。

 以来、「安定して」見るということがいかに難しいことなのかが分かるにつれて物体認識というテーマの面白さを理解し、今にいたっています。なぜ人は、明るさや視点などさまざまな条件が刻々と変化する中で、あるモノを常に「同じモノ」として見ることができるのか―。「当たり前」すぎて思いもしない疑問から人間理解の新たな道が見えてくる、そんな面白さを、一緒に感じてみませんか。